【連載】仏教ってなんだろう/欲と執着を断ち切る八正道(後編)

仏教

前回の記事では、苦しみから解放されるためには苦しみを知ることであり、その原因は欲と執着であること、この二つを断つには八正道を実践することであるということを前提に、八正道の8つの中の半分、「正見」「正思惟」「正語」「正業」の4つをお話しました。

今回は残りの4つ「正命」「正精進」「正念」「正定」をお話します。

正命(しょうみょう)

正命とは正しく生活しましょうという言葉です。

正しく生活をするとは規則正しい生活を送るという意味になりますが、規則正しい生活とは何時に起きて、何時になれば寝る。学校や職場での勉強や仕事の時間、運動、休息、娯楽の時間など日々の生活を規則正しくすることです。

しかし、年齢、性別、職業、持病、体質、環境など人それぞれ様々であると思います。

中には規則正しく生活できない方もいるのではないでしょうか。

たとえそうであっても、その生活の中でもデスクワークの人であれば休憩の5分は体を動かす、朝食を食べない人は少し早く起きてパンを食べる。

今の生活の中でももしかすると変えられるところがあるかもしれません。

私たちの生活は衣食住の上に成り立っています。

不規則な生活が続くと健康面だけで見ても10年後に現れる差は大きなものです。

いただいた命に正しく向き合い、正しい行動を保って正しい生活を守りましょう。

正精進(しょうしょうじん)

精進という言葉は、普段みなさんも使われる通り一生懸命努力するという意味です。

正精進とは、まさに正しく努力しようということです。

正しい努力とは、仏教の修行内容の一つである四正勤(ししょうごん)で説明されています。

・断断(だんだん)

・律儀断(りつぎだん)

・随護断(ずいごだん)

・修断(しゅだん)

の4つから成り、それぞれ

断断は、すでにある悪をなくす努力をすること

律儀断は、新たに悪を発生させないように努力すること

随護断は、今はない善を発生させるよう努力すること

修断は、今ある善をさらに増えるよう努力すること

以上が四正勤です。

家庭や学校、職場でも正しい努力、四正勤を行うことで必ず良い結果へ向かうでしょう。

精進の反対は懈怠(けだい)であり、努力に反して怠けることです。

誠実に努力をして前に進むことが大切です。

正念(しょうねん)

7つ目は正念です。正念とは正しく憶念しましょうという意味です。

憶念とは、深く思い、忘れずにいることです。

お釈迦さまは、正念とは四念処(しねんじょ)に注意を向け、常に自分のこと、周りの状況に気づけるようにすることです。

四念処とは

・ 身念処(しんねんじょ)

・   受念処(じゅねんじょ)

・   心念処(しんねんじょ)

・   法念処(ほうねんじょ)

の4つを指し、身体は不浄であることを観察、一切の感受(印象などを心に受け止めること)するものは苦であると観察すること。

また心念処は心は無常でありすぐに移り変わると観察すること、法念処は諸法(全ての存在)をあるがままに観察し、我がなく無我であると観察することです。

諸行無常 諸法無我 一切皆苦 不浄穢垢

しょぎょうむじょう しょほうむが いっさいかいく ふじょうえく

これを常に心がけ、忘れずにいることが正念です。

うっかりしていた、ついつい忘れていた。

その不注意が自身はもちろん他人の命を脅かすことだってあります。

不注意は不規則な生活の表れです。

規則正しい生活こそが正しく憶念し、周りの状況に注意を向けられるのです。

正定(しょうじょう)

最後の正定とは、正しく心を定め、集中して精神を統一することです。

今までにお話した7つの実践により健全な精神と肉体が備わります。

そして正しく精神統一をすることで、「諸行無常 諸法無我 一切皆苦」の悟りへと至るのです。

これを仏教では「(正しい修行)(正しい精神統一)(正しい智慧)」(かいじょうえ)と説きます。

心の片隅に

以上が後半4つで、前編と合わせて8つのお釈迦さまの教えである八正道でした。

仏教の修行においてもっとも基本的な考え方であり、涅槃に至る実践徳目となります。

すなわち、八正道の実践こそが欲を断ち切り、執着から離れる方法なのです。

日常生活においてもこれらを心の隅に置いて生活を送れば、健全な精神と肉体を手に入れることができ、多くの人が実践できれば社会の調和も安定へと向かうのではないでしょうか。

お釈迦さまが最初に説かれた八正道を前編と後編の2回に分けてお話しました。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました!

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コメント

  1. […] (諸行無常については 八正道 の記事でも取り上げています) […]

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